神様修行はじめます! 其の二

「ほほほ・・・苦しいか? 辛いか?」

彼は無言で堪え続ける。

その両腕が震えている。

足と腰がグラつき始めた。

門川君! 門川君!


「辛いか苦しいか? ほほほほ・・・」

奥方の妖しく光る両目が笑う。

真っ赤な唇がにんまりと弧を描く。

ここぞとばかりに扇子が狂乱の舞を舞った。


「淡雪(あわゆき)よ、苦しめ!苦しめ! 苦しむがよい!!」


目に狂気が広がる。

顔は笑っていながらも、奥方に喜びは一切無い。

笑い声は憎悪に満ちている。

彼女の中には恨みと憎しみ以外に何も無い。


矢継ぎ早に繰り出される攻撃。

ぶつかる金属音。

飛び散る鮮血が真っ白な扇子を赤く染め上げていく。

彼の表情は苦しげに歪んだ。


門川君! 門川君!

彼が・・・彼の血が・・・!

あぁ・・・ああぁ・・・!!


あたしの心臓がバクバクと鳴り響く。

凄まじい速度で鼓動を刻む。

治まっていた胸の痛みが復活した。

ギリギリと焼け付くような痛みがノドから胸にかけて充満する。


また腐敗が進行し始めた。

それを無視してあたしの血潮は熱く滾る。


ついに門川君の体がグラリと大きく揺れ、ドサッとその場に倒れた。