神様修行はじめます! 其の二

右手に持った扇子を受け止めれば、すぐさま左手の扇子が襲い掛かる。

上から、下から、左から、右から。

左右の扇子が生き物のように躍った。


まさに、扇舞。


身をかがめ、立ち上がり、回転する。

無駄の無い完璧な動作。

奥方が動くたびに、艶やかな着物が風に吹かれるように膨らみ動く。

その姿はまるで激しい舞を舞っているようだ。


門川君は懸命に扇子を受け止め攻撃をかわす。

鋭い音、鈍い音、様々な金属音がそのたびに響いた。

あたしは声も出せずに見守った。


あまりにも奥方の動きが素早すぎる!

ヘタに声を掛けたりして彼の集中が逸れたら、その瞬間に切り殺されてしまいそうだ!

奥方! けっこうなトシのくせしてやたら身が軽い!


門川君も意外なほど見事な剣さばきで応戦してるけど・・・。

劣勢なのは明らかだ。

剣舞を専門に修練した相手との技量の差だ。

じりじりと彼が後退し始める。


ピッ・・・!

その彼の頬に、一筋の赤い線が走った。

たらりと血が垂れる。

・・・・?


ピッ・・・ピシッ・・・

その音がするたびに着物や袴が切れる。

そして彼の体に赤い血の線が走る。


・・・なんで!? 門川君は確かに扇子を受け止めてるのに!?

なんで切られているの!?