神様修行はじめます! 其の二

「よかろう! 何度でもわらわが裁きを下してやろうぞ!」


叫ぶ奥方の両手が懐の中に入った。

と同時に、奥方の足が畳を踏み込む。


フッ・・・・・

空気が動いた。


瞬間、10メートルは離れていたはずの彼と奥方の距離がほぼ0になった。

一足飛びに奥方が飛んだ!?

絢爛な着物の柄が真っ直ぐ横になびく。


「・・・・・!!?」

キィンと鋭い、刃物の擦れる音が響く。

とっさに構えた門川君の刀に、広げた白い扇子がギリギリと擦り付けられる。


なにが・・・起こったのか。

あまりにもほんの一瞬の事で、呆けてしまって良く分からない。


「わらわは扇舞の一族。剣舞を司る神の末裔じゃ」

「く・・・っ」

「生まれた時より、扇を使った武術を徹底的に叩き込まれた」

「・・・・・!」

「しょせんお前は言霊師。剣術はまさに付け焼刃であろう。・・・死ね!」


奥方の身がコマの様に素早く一回転した。

くぅんと勢いのついた音と共に、扇子が頭上から門川君目掛けて振り下ろされる。

自分の額ぎりぎりで、門川君は刀でそれを何とか受け止めた。


と思うやいなや、しゅん!と嫌な音がした。

門川君の胸に一文字に赤い線が走り、着物に彼の血がにじむ。

・・・切られた!? 門川君!!

彼はよろけながら後ろに下がる。


間髪置かずに、白い扇子が空を切り襲い掛かってくる。

速い! 速すぎる!

奥方は本当に武術の達人なんだ!!