彼の手の中で銀のメガネが姿を変える。
一振りの美しい日本刀に。
氷が透き通るかのように白く輝く刀身。
刀全体から立ち上る冷気の煙。
それを見た奥方が驚愕した。
「それは・・・!」
「我が母の形見の品です」
「あの女の遺したものは、全てこの世から抹殺したはずであったのに!」
「おばあ様が形を変えて、僕に下さったのです。誰にも言ってはならぬと固く言い含めながら」
「・・・おのれ永世め! 小賢しいまねを!」
奥方のこめかみに、びりびりとスジが立った。
目が釣りあがり鬼女の顔に変貌する。
扇子をこちらに向け、激しく叫んだ。
「天の裁きを下されても、まだ諦めぬのか!」
そして歯をムキ出しにして叫ぶ。
「死してなお、お前はわらわに刃向かうか!・・・淡雪(あわゆき)め!」
憎んで飽き足らぬ女の名を叫ぶ奥方。
奥方にとって、この刀はその人そのものなんだ。
憎い女が産んだ、その美貌に生き写しの子。
憎い女の遺した力を手にして、自分の前に立ちはだかる。
奥方にとって敵は門川君では無いんだ。
奥方は今でも、彼のお母さんを滅ぼそうとしている。
もうとっくの昔に殺してしまった相手を。
自分の犯した罪の亡霊に囚われてしまっているんだ。
そこから逃れるすべはもう、無い。
罪を犯した時点で、奥方は自分で逃れられない道に入り込んでしまった。
そうとは知らずに・・・。
一振りの美しい日本刀に。
氷が透き通るかのように白く輝く刀身。
刀全体から立ち上る冷気の煙。
それを見た奥方が驚愕した。
「それは・・・!」
「我が母の形見の品です」
「あの女の遺したものは、全てこの世から抹殺したはずであったのに!」
「おばあ様が形を変えて、僕に下さったのです。誰にも言ってはならぬと固く言い含めながら」
「・・・おのれ永世め! 小賢しいまねを!」
奥方のこめかみに、びりびりとスジが立った。
目が釣りあがり鬼女の顔に変貌する。
扇子をこちらに向け、激しく叫んだ。
「天の裁きを下されても、まだ諦めぬのか!」
そして歯をムキ出しにして叫ぶ。
「死してなお、お前はわらわに刃向かうか!・・・淡雪(あわゆき)め!」
憎んで飽き足らぬ女の名を叫ぶ奥方。
奥方にとって、この刀はその人そのものなんだ。
憎い女が産んだ、その美貌に生き写しの子。
憎い女の遺した力を手にして、自分の前に立ちはだかる。
奥方にとって敵は門川君では無いんだ。
奥方は今でも、彼のお母さんを滅ぼそうとしている。
もうとっくの昔に殺してしまった相手を。
自分の犯した罪の亡霊に囚われてしまっているんだ。
そこから逃れるすべはもう、無い。
罪を犯した時点で、奥方は自分で逃れられない道に入り込んでしまった。
そうとは知らずに・・・。


