神様修行はじめます! 其の二

彼と奥方が対峙する。

お互いの絡み合う強い視線が、まるで目に見えるようだ。

ジリ・・・と奥方が距離を詰める。

あたしのノドがごくりと鳴った。


「わらわに刃向かうか? ふんっ」

「・・・・・」

「もはやお前には、ほとんど力は残ってはおらぬであろう」

奥方が勝ち誇ったように言う。


ここまでに、門川君は大技小技の連発だった。

たぶん、ものすごく力を消費してしまったはず。

いくら彼が氷系統の術を得意としていても、体力がもたない。

あたしの胸は一気に不安に染まった。


「門川君・・・」

「天内君、下がっていたまえ」

彼は奥方から視線を逸らさないまま、あたしに話しかけた。


「でも」

「僕なら大丈夫だ」

「・・・・・」

「心配いらない。『側にいれば無敵』だろう?」


彼はチラリとあたしを見て、優しく微笑んだ。


「・・・・・うん」

あたしは大きくうなづいた。


「愚かしい。諦めて早々に逃げ出せば良いものを」

あざける様な奥方の言葉。

門川君はまた冷徹な目で奥方に向き直る。


「僕はもう二度と、諦めも逃げ出しもしません」

「命を無駄に捨てるか。ほんに愚かしい」

「この命、捨てはしません」


彼の手が、メガネにかかる。

白い指先がメガネを外し、彼の美貌の素顔があらわになった。