神様修行はじめます! 其の二

門川君は髪を両手で掻き毟り、絶叫した。

まさか・・・

門川君のお母さんが奥方に殺されていたなんて!


門川君は自分の実母を殺した女を、仮にも『母』と呼ばされていたの!?

お父さんまでが奥方の謀略の犠牲になってしまった!

こんな・・・こんな救いようの無いことって・・・!


「母上、母上、母上・・・!」

門川君は畳をこぶしで殴り、何度もそう繰り返す。

どちらの母を呼んでいるのか・・・。

あたしは彼の体にしがみ付くように、必死にその体を抱きかかえた。


その様子をにんまりと見ていた奥方の表情が、突然変わる。

不機嫌に、恨みの篭もった目に戻った。


「しかしまさか永守様までも参戦なさるとは・・・」

「母上・・・!」

「あの女が無理やり戦いに連れて行ったのじゃ! あの女は恐るべき罪人じゃ!」


奥方は裏返った声で叫んだ。


「あの女が、わらわの永守様を殺した! 全てあの女の罪じゃ!」


叶わぬ想いは暴走する。

遂げられない想いは狂気となり、全てを破壊する。

あたしはそれをよく知っている。

とてもよく知っている。


ここでも・・・悲劇が繰り返されてしまったんだ・・・。


「あの女にお前は瓜二つじゃ。顔貌だけではない。あの女はわらわから全てを奪い・・・」

「・・・・・」

「お前は、我が子から全てを奪った」


奥方は裾を引きずりながら前に進んだ。

一段高い場所から降りる。


「大罪人のお前に天罰を下す。それがわらわの望む事であり成すべき事じゃ」