神様修行はじめます! 其の二

氷血の一族の娘。

際立つ美貌、抜きん出た能力。

物静かで落ち着いた上品な物腰。


ふたりは幾度か共に戦い、親しくなっていった。


本当に、際立って美しい娘であった。

わらわが見惚れてしまいそうになるほどに。

その美貌を見るたびに、わらわの心は不穏にざわめき・・・


わらわは華やかな髪飾りを身に付けるようになった。


永守様は、それを見ても何も言わず・・・

わらわの心にひとつ、黒いシミがポツンとついた。


その娘は、よく笑顔を見せた。

なんと下賎な女であろう。人前で笑うなどと言語道断。

だが、その笑顔の先にはいつも永守様の笑顔があった。

ふたりは微笑み見詰め合っていた。


わらわは、豪華な衣装を身にまとうようになった。


やはり永守様は何も言わず・・・

心の黒いシミは大きくなった。


ほどなくふたりは、夜を共にするようになる。

ふたりが共に過ごす夜。わらわはひとり、部屋で寝ていた。

ひとりの部屋はどこまでも広くて・・・


わらわは、高価な家具で部屋を満たした。

あのふたりが夜を共に過ごすたびに、それは増えていった。

黒いシミは、広がり続け・・・


やがて・・・

永久が生まれた。


永久を抱くあの女に、永守様がささやく。

『愛している。心から・・・』

そして熱く口付けを交わす。

わらわに触れなくなった唇で。

愛しげに髪を撫でる。

わらわに触れなくなった指で。


わらわの心は真っ黒に染まり・・・

両目から熱い雫が、はらはらと零れ落ちた。


神の母たる者、涙など流してはならぬ。

なのに止めても止めても・・・涙は零れ続けた。