『・・・緊張とは?』

『さっきから固まったまま、一度も笑ってくれないから』

『高貴なる者は、むやみに表情を変えてはなりませぬ』

『・・・・・』

『そのような不躾な女ではございませぬゆえ』

『ぶしつけ・・・』


そう。

むやみに女が人に歯を見せるなど、そんな無作法はせぬ。

なぜならわらわは、永守様に最もふさわしい女として教育を受けた身なのだから。

そう思うと、とても誇らしく嬉しく感じた。


でも永守様は、なぜか少し困ったようなお顔をなされた。


『・・・華子、これからよろしく頼むよ』

そう言ってわらわに再び微笑み・・・

慌ててまた、困った顔をされていた。


その日の夜・・・


初めて寝所を共にし、夜を迎えた。


『華子、華子、華子・・・』

熱い吐息がわらわの耳を覆い、汗ばんだ手がわらわの手を握った。

衝撃と痛みに、わらわは翻弄された。

それでも必死に耐えた。


取り乱してはならぬ。声を出してもならぬ。

わらわは神の母。永守様の妻じゃ。

不躾なふるまいなど、神の母にあるまじき態度など絶対にするものか。


永守様に幻滅されてしまう・・・!

感情をあらわにしてはならぬ!

どこまでも人形のように・・・!


永守様を受け入れ終わった時、わらわは満足感に満ちていた。

終わりまで、神の母にふさわしい態度を崩さなかった自分に。


永守様は、そんなわらわを見ながら、戸惑っているご様子だった。