「母上、門川は僕が継ぎます」

「・・・・・」

ぴたっと、奥方の泳いでいた視線が止まった。


「ですからどうぞ母上はご隠居下さいませ」

「・・・・・」

奥方が、門川君と視線を合わせた。


「どうかこれからは、ごゆるりと養生を・・・」

「ならぬ」

「・・・・・は?」

「それだけはならぬ」

「母上・・・?」

「それだけは・・・それだけは許せぬ」


奥方の表情が一変した。

どこか無心な子どものようだった表情が。

ぎりりと眉尻が上がり、目が鋭く光る。


「あの女の子どもが当主となるのだけは、許せぬ!」


そう叫んで奥方が勢い良く立ち上がった。

豪華絢爛な衣装を身にまとい、仁王立ちする。

表情も険しく門川君を睨みつけて怒鳴り散らした。


「永守様を惑わした、あの下賎な女の産んだ子を当主などにはさせぬ!」


永守様・・・? 永守って・・・あ。

お兄さんと門川君のお父さん?

奥方の夫・・・。