余計なお世話よ。

人は生まれるべくして生まれ、自分の力で望むものを見つけ、成すべき事を成す。

そして譲れぬものを守って生きていくんだ。


答えなんて決めていただかなくて結構。

そんなもの用意してもらわなくて結構よ。


自分で見つけるから。


それが門川君が苦悩の末に見つけた一条の光。

道しるべなんだから。



「母上、あなたも生まれるべくして生まれてきた」

「わらわが・・・?」

「はい。ですからもう、妄執に囚われ続ける必要は無いのです」

「・・・・・」

「母上は、真実、御自分で望む事をお探し下さい」

「わらわの、真の望み・・・」

「はい」


ゆっくりと扇子が下がり、奥方の表情が露見した。

視線を泳がせ、完全に戸惑っている。

「わらわの、わらわの望みは・・・」

眉間にシワを寄せ、必死に何かを考え込んでいる。


この人は、今まで自分で自分の事を考えた事があるんだろうか?


生まれた時から、問答無用で自分の成すべき事を決め付けられて。

それを信じて成し遂げるのに精一杯で。

自分自身で、何かを望んだ事なんてあるんだろうか?


無かったのなら、これから探せばいい。

自分の成すべき事を自分で選んで決めればいいんだ。

そうやって生きていけばいい。

後は・・・門川君が引き継ぐから。