神様修行はじめます! 其の二

そんな命に価値は無いって言いたいんだ。


でも、そんなの間違ってる!

人の命ってそれだけじゃ無いと思う!

人が生きるって事は、それだけじゃ無いと思う!

思うのに・・・。


それをあたしは言葉にできない。


人が生まれる意味なんて、とてもあたしじゃ言葉にできない。

言葉にできないほど、大きくて意味あるものが命なんだもの。


まるで負け惜しみみたいに、奥方を睨みつける事しかできない・・・。


言ってやりたい。

奥方に・・・奥方の背後のもの全てに言ってやりたい。

あなた達は間違ってるって。


自信を持って断言したいのに。

お兄さんと秋風さんの名誉を守りたいのに。

それが・・・できない!


悔しい! 悔しい! 悔しい! 

お兄さん、秋風さん、ごめんなさい・・・!


ギリギリと歯を鳴らして、あたしは睨み続けた。



「母上、それは違います」

静かな、きっぱりと断言する声が聞こえた。

門川君・・・?


あたしは、堂々と前を見て奥方に話しかける彼を見た。

真っ直ぐで、まったく迷いの無い目だった。


「ほう? あのふたりの命に価値があると申すか?」

「はい」

「してその根拠は?」

「それは・・・」


門川君は、遠く、優しげな目になった。


「あの二人は・・・幸せだったからです」