神様修行はじめます! 其の二

「兄上・・・」

門川君が、万感迫る声でお兄さんに呼びかける。

炎の中のお兄さんに、その声は届いてはいない。

でも門川君は、何度も何度も呼びかけた。


「兄上、兄上、兄上・・・」


お兄さんは・・・門川君の事をずっと大切に思っていたんだ。

あの約束も忘れてはいなかった。

自分が当主になって、弟を守ってみせると誓った約束を。


お兄さんが門川君に嫉妬していたのは、本当なんだと思う。

ノドから手が出るくらい欲しいと思っている力を持っている弟。

うらやましくて妬ましくて、仕方なかったんだと思う。


でもそれは当然だ。

嫉妬とか、羨望とか、ねたみとか。

そんなの、あって当然の感情だ。だって人間なんだもの。

それを責める権利のある人間なんて、どこにもいない。


でもお兄さんは、門川君を思う気持ちも忘れていなかった。

弟を守りたいって気持ちだって、間違いなく彼の真実なんだ。

人の心は機械じゃないもの。

たくさんの複雑な扉を持っている。


妬んで、嫉妬して・・・

それでも、泣いて自分の名を呼ぶ声を聞けば、必死に駆けつけようとする。


それでいいんだ。

どちらも両方が真実の心なんだ。

それが人の姿なんだ。


それでいい・・・。

それだけで充分なんだ。

だってほら、門川君は・・・


こんなにも救われた顔をしているんだから。