神様修行はじめます! 其の二

お兄さんは近づいてくる。

猶予も、他の選択も無い。

何ひとつ彼には許されない。

永世おばあ様、セバスチャンさん、権田原の民達。

それらの人の犠牲の上に生きる彼には、何ひとつ・・・。


門川君・・・!!

それでも、それでもあなたは生きなければならない・・・!!


なんて無残な道を生きねばならないのだろうか。

狂おしい感情に翻弄されるあたし達は強く抱きしめあい、声もなく泣いた・・・。



不意に風を切る鋭い音が聞こえた。

そして何かが勢い良く畳に突き刺さる音が聞こえる。

畳の上に・・・お兄さんの影の上に、刃物が突き刺さっている。


あれは・・・クナイ?


刺さったクナイが音も無く腐った。

お兄さんが、刃物が飛んできた方向を振り返る。

再び、風を切る音。


数本のクナイが、またお兄さんの影の上に突き刺さる。

お兄さんの動きが、何かに押し止められるようにピタリと止まった。


あれは・・・あのクナイは・・・


ガレキと化した壁の向こうに、人が立っていた。

濃い紺色の無地の着物を身にまとって。


無造作に垂れた黒髪。

一重の切れ長の目。

長いまつ毛。真っ白な肌。


秋風さん!!


秋風さんが、悠然とその場に立っていた。