後ろから、すごい力で襟をつかまれ引っ張られた。
あたしは後ろに引っくり返る。
畳に尻餅をつきそうになった時、後ろからギュッと抱きしめられた。
冷たい二本の腕に、羽交い絞めにされるように。
まるで絞め殺されそうなくらい、ものすごい力。
死に物狂いであたしを抱きしめる門川君を、あたしは見る。
彼の目を。
極限状態になってしまっている彼の表情を。
何も言わなくても分かる。
彼がいま何を思い、その心に何が荒れ狂っているのか。
分かってる。
自分が選ぶべき事くらい、彼だって百も承知だ。
なにを行うのが正しいのかくらい、嫌ってほど分かってる。
でもあたしが今の彼の立場なら・・・とても選べないだろう。
自分の命ならば、誰かのために捨てる事もできるだろう。
でも彼の命は捨てられない。
これだけは、これだけはあたしには捨てられない。
なのに
捨てるべきだと声が聞こえる。
そうする事が正しい事だと声がする。
正しい行いのために犠牲を払えと命令する。
『正義の心』が。
自分じゃないのに。
捨てられてしまうのは自分じゃなく、愛する者の命なのに。
その命に犠牲を払わせながら、お前は生きろと『正義』が命令する。
そのままずっと生きて行けと・・・あたしは、残酷にも彼に言ってしまった。
それが正しい、彼が成すべき事だから・・・。
あたしは後ろに引っくり返る。
畳に尻餅をつきそうになった時、後ろからギュッと抱きしめられた。
冷たい二本の腕に、羽交い絞めにされるように。
まるで絞め殺されそうなくらい、ものすごい力。
死に物狂いであたしを抱きしめる門川君を、あたしは見る。
彼の目を。
極限状態になってしまっている彼の表情を。
何も言わなくても分かる。
彼がいま何を思い、その心に何が荒れ狂っているのか。
分かってる。
自分が選ぶべき事くらい、彼だって百も承知だ。
なにを行うのが正しいのかくらい、嫌ってほど分かってる。
でもあたしが今の彼の立場なら・・・とても選べないだろう。
自分の命ならば、誰かのために捨てる事もできるだろう。
でも彼の命は捨てられない。
これだけは、これだけはあたしには捨てられない。
なのに
捨てるべきだと声が聞こえる。
そうする事が正しい事だと声がする。
正しい行いのために犠牲を払えと命令する。
『正義の心』が。
自分じゃないのに。
捨てられてしまうのは自分じゃなく、愛する者の命なのに。
その命に犠牲を払わせながら、お前は生きろと『正義』が命令する。
そのままずっと生きて行けと・・・あたしは、残酷にも彼に言ってしまった。
それが正しい、彼が成すべき事だから・・・。


