音も無く氷柱が宙で動きをぴたりと止めた。
お兄さんを今にも貫く直前に。
・・・え?
ずぶずぶと腐敗し、溶け始める。
・・・え? え!?
氷柱はあっという間にドロリと溶け落ち、畳の上で黒い色の水溜りになり果てた。
そんな・・・。
門川君の氷さえ、腐敗させてしまうなんて・・・。
呆然としているあたし達に、お兄さんが悠然と近づいてくる。
「門川君、やっぱり逃げてっ」
あたしは彼の胸元を手で押して、彼を突き飛ばそうとした。
途端に体に激痛が走り、自分のノドと胸を押さえてうめき声を上げる。
「動くなと言っているだろう!」
「分かった。一歩も動かないって約束するから、今すぐ逃げてっ」
「あと少しなんだ・・・もう少し!」
門川君は逃げようとせず、治療を続ける。
あたしは痛みに耐えながら彼の体を押し続け、叫んだ。
「お願いだから逃げて! 成すべき事があるんでしょう!?」
「動くな! 腐敗が進行する!」
「あたしの言う事を聞いてよ!」
「君が僕の立場なら、見捨てて逃げるのか!?」
逃げ・・・
逃げない、よ・・・
痛みと苦しみで涙が両目に盛り上がる。
それでもあたしは必死に彼の体を押し続けた。
逃げないよ。あたしだったら絶対に逃げない。
門川君を置いて逃げたりなんてしない。
でも、門川君は逃げなきゃならないんだよ!
お兄さんを今にも貫く直前に。
・・・え?
ずぶずぶと腐敗し、溶け始める。
・・・え? え!?
氷柱はあっという間にドロリと溶け落ち、畳の上で黒い色の水溜りになり果てた。
そんな・・・。
門川君の氷さえ、腐敗させてしまうなんて・・・。
呆然としているあたし達に、お兄さんが悠然と近づいてくる。
「門川君、やっぱり逃げてっ」
あたしは彼の胸元を手で押して、彼を突き飛ばそうとした。
途端に体に激痛が走り、自分のノドと胸を押さえてうめき声を上げる。
「動くなと言っているだろう!」
「分かった。一歩も動かないって約束するから、今すぐ逃げてっ」
「あと少しなんだ・・・もう少し!」
門川君は逃げようとせず、治療を続ける。
あたしは痛みに耐えながら彼の体を押し続け、叫んだ。
「お願いだから逃げて! 成すべき事があるんでしょう!?」
「動くな! 腐敗が進行する!」
「あたしの言う事を聞いてよ!」
「君が僕の立場なら、見捨てて逃げるのか!?」
逃げ・・・
逃げない、よ・・・
痛みと苦しみで涙が両目に盛り上がる。
それでもあたしは必死に彼の体を押し続けた。
逃げないよ。あたしだったら絶対に逃げない。
門川君を置いて逃げたりなんてしない。
でも、門川君は逃げなきゃならないんだよ!


