『渡さぬ。誰にも渡さぬ・・・』
豪華絢爛な衣装をまとったミイラが、まるで生きてるように自在に動き回る。
そして門川君を追い立てた。
『渡さぬ。渡さぬ・・・』
口元を袖で覆いながら、懸命に門川君は身をかわす。
彼の着物の表面が、少しずつ腐って崩れていく。
あたしはまた激しく咳き込み、慌てて息を止めた。
座敷の隅に飾られていた金魚鉢の中の金魚。
白く丸いお腹を上にして、プカプカと浮いている。
もう腐敗の空気が部屋全体に充満してるんだ。
このままじゃ、どんどん濃度が増していく!
門川君は部屋中を必死に逃げ回る。
お兄さんに近づこうにも、近づいたらあっという間に体が腐ってしまう。
それに門川君には、お兄さんを攻撃するなんて無理だ。
彼は、お兄さんは自分が殺したようなものだと思ってるだろう。
深い深い負い目がある。
そのうえ、こんな無残な姿で浮かばれずに利用されている実の兄。
それを自分の手で無碍に葬るなんて・・・。
まともな神経してたらそんな事は、とてもできっこない。
だから・・・
あたしが、お兄さんを滅する!
門川君を守らなければ!
できる事なら倒したくはない。お兄さんを救いたい。
でもそれ以上に、あたしは門川君を守りたい!
お兄さんが門川君に害をなすというなら、あたしはお兄さんを倒す!
豪華絢爛な衣装をまとったミイラが、まるで生きてるように自在に動き回る。
そして門川君を追い立てた。
『渡さぬ。渡さぬ・・・』
口元を袖で覆いながら、懸命に門川君は身をかわす。
彼の着物の表面が、少しずつ腐って崩れていく。
あたしはまた激しく咳き込み、慌てて息を止めた。
座敷の隅に飾られていた金魚鉢の中の金魚。
白く丸いお腹を上にして、プカプカと浮いている。
もう腐敗の空気が部屋全体に充満してるんだ。
このままじゃ、どんどん濃度が増していく!
門川君は部屋中を必死に逃げ回る。
お兄さんに近づこうにも、近づいたらあっという間に体が腐ってしまう。
それに門川君には、お兄さんを攻撃するなんて無理だ。
彼は、お兄さんは自分が殺したようなものだと思ってるだろう。
深い深い負い目がある。
そのうえ、こんな無残な姿で浮かばれずに利用されている実の兄。
それを自分の手で無碍に葬るなんて・・・。
まともな神経してたらそんな事は、とてもできっこない。
だから・・・
あたしが、お兄さんを滅する!
門川君を守らなければ!
できる事なら倒したくはない。お兄さんを救いたい。
でもそれ以上に、あたしは門川君を守りたい!
お兄さんが門川君に害をなすというなら、あたしはお兄さんを倒す!


