『ならぬ。永久が当主となるのは決して認めぬ・・・』
負の感情の空気を全身から発しながら、お兄さんはあたし達に近づいてきた。
表情の無いミイラ化した顔を黒紫色の煙が覆う。
『当主の座は我のもの。誰にも渡さぬ・・・』
嫌な臭い・・・。
お兄さんが近づくにつれて、腐敗しきった嫌な臭気が漂ってくる。
あたしは咳き込んでしまった。
なんだろう。臭いだけじゃなくて、これって・・・
「門川君、胸が苦しいよ」
「兄の事を哀れんでくれるのか? しかし今は・・・」
「いや、そういうんじゃなくてっ」
お兄さんが痛ましくて、お気の毒で胸が痛いとかじゃ無くてっ。
現実に気管と肺が痛いのよっ。
「文学的比喩じゃなく、生物学的に痛いのっ」
あたしの言葉に門川君はハッとする。
そして口元を押さえながら、あたしの手をつかんで部屋の入り口に向かって走り出す。
「か、門川君?」
「息を止めろ!」
「え?」
「この空気を吸うと内臓が全て腐ってしまうぞ!」
えぇっ!?
腐敗の空気をまとったお兄さんが、あたし達に突進してきた。
驚くあたしを、門川君がいきなり横に突き飛ばす。
勢い余って畳に転がってしまう。
お兄さんは門川君に飛びかかろうとする。
間一髪、爪の先の差で門川君は後ろに飛んで逃れた。
お兄さんに触れられた部分の着物の生地が、ドロリと腐ってボロッと落ちた。
負の感情の空気を全身から発しながら、お兄さんはあたし達に近づいてきた。
表情の無いミイラ化した顔を黒紫色の煙が覆う。
『当主の座は我のもの。誰にも渡さぬ・・・』
嫌な臭い・・・。
お兄さんが近づくにつれて、腐敗しきった嫌な臭気が漂ってくる。
あたしは咳き込んでしまった。
なんだろう。臭いだけじゃなくて、これって・・・
「門川君、胸が苦しいよ」
「兄の事を哀れんでくれるのか? しかし今は・・・」
「いや、そういうんじゃなくてっ」
お兄さんが痛ましくて、お気の毒で胸が痛いとかじゃ無くてっ。
現実に気管と肺が痛いのよっ。
「文学的比喩じゃなく、生物学的に痛いのっ」
あたしの言葉に門川君はハッとする。
そして口元を押さえながら、あたしの手をつかんで部屋の入り口に向かって走り出す。
「か、門川君?」
「息を止めろ!」
「え?」
「この空気を吸うと内臓が全て腐ってしまうぞ!」
えぇっ!?
腐敗の空気をまとったお兄さんが、あたし達に突進してきた。
驚くあたしを、門川君がいきなり横に突き飛ばす。
勢い余って畳に転がってしまう。
お兄さんは門川君に飛びかかろうとする。
間一髪、爪の先の差で門川君は後ろに飛んで逃れた。
お兄さんに触れられた部分の着物の生地が、ドロリと腐ってボロッと落ちた。


