神様修行はじめます! 其の二

・・・・・ぴくり。


奥方の目尻が一瞬だけ上がった。

篭もった笑い声がぴたりと止まる。


「我が子、永継は・・・力を継いでおる。発動せぬだけじゃ」

「じゃあなぜ発動しないの?」

「・・・・・」


奥方の、あたしに注がれる視線が変わった。

今までの、まるでそこらの虫でも眺めている様な視線が。


「なんでよ? 神の母が産んだ子なら完璧な存在のはずでしょ?」

「無論。永継は真の神の末裔・・・」

「じゃあなんで閉じ込めて隠したの?」

「・・・・・」


ぴくり。

また奥方の目尻が一瞬上がる。

目に感情の色が見える。

あたしの言葉に反応し、心が乱れ始めている。


「神とは隠れるものじゃ。その尊さ故に、安易に姿を見せるものではない」

「じゃあなんで・・・」


あたしは息を吸う。

奥方を見据えながら、腹の息を吐き出した。


「なんでお兄さんは自ら命を断ったの?」


びくりっ。


奥方の目尻が跳ね上がった。

頬がぴくぴくと痙攣するように細かく動いている。

あたしを見ている両目に、光が宿る。

睨みつけるような強い光が。