憎い。憎い。お前が憎い。
憎くて憎くてたまらなかった。
我に無いもの全てを持つお前が。
我から全てを奪ったお前が。
死して後、なおも我から奪おうとするお前が。
お前が・・・ずっと憎かった。
ほの暗い怨嗟の念。
部屋中にこだまする恨みの声。
あちこちに跳ね返り、門川君の耳に胸に、襲い掛かる。
門川君の唇が震える。
これでもかと言わんばかりに降りそそぐ、残酷な言葉に。
頬から血の気が引き、瞳が哀しみの色に染まる。
やめて・・・。
お願いもうやめて。
あたしはお兄さんに向かって、何度も首を横に振った。
やめて。彼にそんな事言わないで。
憎いなんて・・・ずっと憎んでいたなんて、もう言わないで!
門川君にとって、あなたは特別な存在だったの。
共に傷付き、苦しみを理解し合える存在。
幼い肩を寄せ合い、微笑みあった人。
小さな手で、一生懸命守ってくれた人。
数少ない・・・彼にとって本当に数少ない、温かな思い出。
思い出の中で、笑顔で約束を交わした人。
忘れえぬ、かけがえの無い人。
あなたは彼の心を支える大切な柱のひとつだったの。
そのあなたから・・・
あなた本人の口から・・・
「ずっと憎んでいた」なんて言葉を聞かせないで!


