神様修行はじめます! 其の二


憎い。憎い。お前が憎い。

憎くて憎くてたまらなかった。


我に無いもの全てを持つお前が。

我から全てを奪ったお前が。

死して後、なおも我から奪おうとするお前が。


お前が・・・ずっと憎かった。



ほの暗い怨嗟の念。

部屋中にこだまする恨みの声。

あちこちに跳ね返り、門川君の耳に胸に、襲い掛かる。


門川君の唇が震える。

これでもかと言わんばかりに降りそそぐ、残酷な言葉に。

頬から血の気が引き、瞳が哀しみの色に染まる。


やめて・・・。

お願いもうやめて。


あたしはお兄さんに向かって、何度も首を横に振った。

やめて。彼にそんな事言わないで。

憎いなんて・・・ずっと憎んでいたなんて、もう言わないで!


門川君にとって、あなたは特別な存在だったの。

共に傷付き、苦しみを理解し合える存在。


幼い肩を寄せ合い、微笑みあった人。

小さな手で、一生懸命守ってくれた人。

数少ない・・・彼にとって本当に数少ない、温かな思い出。


思い出の中で、笑顔で約束を交わした人。

忘れえぬ、かけがえの無い人。

あなたは彼の心を支える大切な柱のひとつだったの。


そのあなたから・・・

あなた本人の口から・・・


「ずっと憎んでいた」なんて言葉を聞かせないで!