金、銀、藍、朱、黒。

艶やかで華やかな空間。


金箔銀箔が張られている、ふすまや屏風。

天井には繊細に描き込まれた小花模様。

精密で豪勢な調度品の数々。


走り続けるあたし達。

見覚えのある光景が流れていく。

そうだ、この場所だ。あたしは以前、ここに来た。


この奥に間違いなく奥方の部屋がある。


門川君はわき目も振らず、真っ直ぐ走っていく。

迷路のように広く入り組んだこの場所で、迷いはカケラも無い。

記憶しているんだ。しっかりと。


ここで自分に与えられた、屈辱と悲劇と虐待と共に。

忘れる事なく刻み込まれている。


休まずに走り続け、奥へ奥へ・・・。

そして、ひときわ豪勢な細工の施されたふすまが見えてきた。


あたし達は、そのふすま絵の前で止まった。


大振りな松の木の緑。

豪快に流れる大河を現す墨。

虎や鳥、様々な生き物に彩られる金、銀、極彩色。


・・・・・ここだ。


ついに来た。全身が緊張する。

ざわざわと血がざわめき、皮膚がジリジリと痺れる。

いる。ここに。

あたし達の目指すものが、ここにある。