神様修行はじめます! 其の二

するするする・・・


静かな、衣擦れに良く似た音。

白く細い体に走る、何本もの極細の金の筋。

濃紅なルビーのような目。

夜目に浮かぶ、一匹の小さな白いヘビ。

あの姿は・・・


「あんた達、戻ってたのかい?」

この声は・・・

この緊張した場に全然そぐわない、のんびりした声は。


門川の沼の主の・・・


「白妙(しろたえ)さんっ!!」

「・・・あたしゃ帰るよ」


そう言うと、するするするっと回れ右してホントに帰り始めた。

うわわ! 忘れてた!

そういえば白妙さんって、名前呼ばれるの大嫌いだったんだっけ!


「主さん! どうしてここに!?」

「あんまり賑やかだから、お祭りでもやってるのかと思ってねぇ。ちょいと覗きに来たのさ」

濃紅の両目をこちらに向ける。

お、お祭りって・・・。


「ところで、あの化け猫はどこ行ったんだい?」

周囲を見回しながら、主さんが聞いてきた。


「絹糸は・・・戦っています」

「ふうん。そういやあっちで、やたらゴロゴロと雷がやかましかったね」

「絹糸・・・・・」

「あいつもずいぶん元気そうだねぇ」


元気って・・・。

そりゃ、元気でいてもらわないと大変な状況なんだけど。