神様修行はじめます! 其の二

「あぁ、かなりまずい状況だ」

門川君が、あたしを後ろに庇いながら言った。

その声の底に、真剣に焦りの色が現れている。


あたしの背後からも、鬼達がじりじりと詰め寄ってくる。

しま子が「うがあぁ!」と鬼達に向かって叫びながら、あたしの背後に立った。


「門川君、この鬼達って今すぐ全員使役できないの?」

「無茶を言わないでくれ!」

あたしの提案は、あっさり却下されてしまった。


「鬼を一体使役するのに、どれほどの時間と労力がかかると思ってるんだ!?」

「し、知らないよそんな事!」

「鬼は、『恐るべきもの』『厄災』そのものが具現化したものだ。神にも近しい存在なんだよ」


神にも近しい存在?

鬼って、そんなご大層なものだったの?

そのわりに節分じゃ、豆ひとつで撃退させられてるじゃないの!?


「節分? あれはもともと平安時代の『ツイナ』の儀式から変形して・・・」

「そんな講釈、いま聞いても分かんないから!」

「とにかく鬼を封じるのは至難の技なんだよ!」


でもでも!

しま子の事は使役できたわけなんでしょ?

だったら・・・


「おばあ様と二人がかりで、貴重な術具を惜しげもなく使い、五日間徹夜してぶっ通しで、やっとの事で使役できた」

「・・・・・」

「あの時は、本当に死を覚悟したよ」