神様修行はじめます! 其の二

門川君が無言で立ち上がった。

彼の手から、セバスチャンさんの手が滑り落ちる。

うつむいて唇を固く結び、悲痛な表情で、もう虫の息のセバスチャンさんを見下ろしている。


セバスチャンさんは、どこか安心したような目をした。


「永久様っ!!?」

「お岩! もういい加減にするだよ!」

「お父ちゃんっ!!」

「自分のせいで戦いに負けたとなったら、遥峰の誇りはどうなるだ!?」

「誇りなんかより命の方が大事に決まってるじゃないの!」


お岩さんはもう、ほとんどパニック状態になっていた。

両手両足を振り回して暴れ、地面を殴り、蹴り続ける。

錯乱状態の子どものようだ。


「お前は遥峰に、生涯尊厳を失ったまま生きろと言うだか!? そんな恐ろしい重荷を背負えと言うだか!?」

「重荷なら・・・重荷ならあたしも一緒に背負って、生涯共に生きていく!」

「このバカ娘があ――っ!!!」


ズンッと空気が振動した。

それと同時に当主さんのアリ地獄が、ふっと消え去った。


当主さんの精神の乱れが、ついに限界を超えてしまったんだ!

術が解除されてしまった!


アリ地獄から開放された獣人達が、怒りに燃えて襲い掛かってきた。

こちらに向かおうとしたミミズのピエール達にも、獣人達が大挙して飛び掛る。


当主さんは尻餅をついて倒れる。

お岩さんはセバスチャンさんをかばうように抱きしめた。

しま子があたしの前に立ちはだかる。


憎しみに狂った獣人達の血走った目が、間近に迫った。