神様修行はじめます! 其の二

「離しなさい! 遥峰っ!!」

「いいえ・・・」

「離しなさいセバスチャン! これは命令よっ!」

「いい、え・・・」

「離しなさい! 離せってば離せっ!」

お岩さんがセバスチャンさんの手をバシバシと叩いた。


「岩・・・わからない事を言うなよ・・・」

「なによ! わかってないのはあんたでしょ!?」

お岩さんの両目から涙がぶわっと溢れた。


「あんたもお父ちゃんも大バカだっ!!」

「岩・・・門川を、変えるんだろ? 世界を救うんだろ・・・?」

「だからバカだって言ってるのよ!!」


ぼたぼたと音をたてて、お岩さんの目から涙が流れ落ちる。


「門川も世界も、そんなの知らない!! 遥峰が生きててくれるなら、それでいいのよ!!」


そう叫んで、お岩さんはセバスチャンさんの燕尾服のエリをつかんだ。


「世界よりも、あんたの方が大事に決まってるでしょ! そんな事もわかんないの!?」


ぼたぼたと落ちた涙が、セバスチャンさんの頬を濡らした。

大泣きしながら眉を吊り上げ、すごい形相で叫ぶお岩さんを見て・・・

セバスチャンさんの唇が、困ったように笑った。


その唇はもはや色を失い、紫色になっていた。


「セバスチャン、言ったはずだ。僕はもう見捨てる事はしない」

門川君の言葉に、セバスチャンさんが視線を移す。

そう言った彼の言葉を責めるような視線だった。