神様修行はじめます! 其の二

「ふむ、その通りじゃ。皆、急げ」

「よし! 行こうっ!!」

「気をつけて行くのじゃぞ」

「へ?」


絹糸、何を他人事みたいに言ってんのよ?

あんたも一緒に・・・



唸り声と、土を踏む音が間近に聞こえて振り向いた。


そこに巨大な獣がいた。


獅子のような体躯。全身が黄金色。

長いたてがみは、ひときわ強く光彩を放っている。

真っ黒な両目は、底知れぬ闇のように深い。


四肢の巨大な爪は銀色に輝き、飛び出た長い牙が赤々と濡れている。

その足元に、血に染まった権田原の民と牛達の姿が・・・。


あたしは、ゾッと寒気がした。


この獣は・・・ケタが違う。

何が違うのか、どう違うのか、説明はできない。

でも、感じる。


生き物として、本能的に察知する。

近寄ってはいけない相手というものを。

触れてはいけない存在というものを。


この獣は・・・人の世に放たれてはならない存在だ。


その獣があたし達に向かって、じりじりと近づいてくる。