「君は本当に、うまそうに食べる」

門川君が笑ってそう言った。


だって本当においしいんだもん!

権田原の食べ物って、地味だけどみーんなおいしい物ばかりなんだよね。

おいしい物を、しっかり食べれば、あんな良い人間に育つのかなぁ?

食育ってやつ?


「あながち外れてはおらぬが、同じ物を食っとる門川の連中は、あのザマじゃぞ?」

「あ、そっか」

「食い物ばかり良くても、人は育たぬよ」

「うーん、哲学だねー」


人間って、やっぱり複雑だなぁ。


「門川君も食べなよ。おいしいよ!」

「・・・あぁ、頂こう」

門川君が、お握りをひとつ手に取った。


「なんじゃ、食うのか? 食欲が無いと言っておったくせに」

「天内君のすごい食欲が伝染したんだよ」

「伝染ってなによっ。ウィルスじゃあるまいしっ」

「それぐらい脅威的なんだよ。君の持つ雰囲気は」

「人を生物兵器みたいに言うなっ!」

「こりゃ小娘っ。飯粒が口から飛んでおるぞっ」

「あ、もったいない」

「論点はそこじゃなかろうがっ」

「うあぁ~~・・・っっ!」

「し、しま子!? なに悶絶してんの? 大丈夫!?」

「梅干がすっぱい!! ・・・だそうじゃ」

「・・・しま子の顔、クシャクシャ~!!」


あたし達は揃って大笑いした。