そして長いドレスの裾を引きずり、こちらに近寄ってきた。

あたしも黙ってそれを見ている。

どんどんあたし達の距離が近づき・・・

体がぶつかりそうな位になった。


「・・・・・・・」

「・・・・・・・」


お岩さんは、急にドスンとその場に座り込んだ。

ドレスがぶわんと膨らんで、花びらのようだ。

そして、空を見上げる。


「天内さん、ご存知?」

「・・・・・?」

「門川の当主には、公然とした愛人制度がありますの」


夜空を見上げたままで、お岩さんはあたしに話しかける。


あたしは、お岩さんの横に座った。

そして同じように、夜空を見上げる。


「愛人制度?」

「当主の伴侶を、上層部が勝手に決めるのはご存知?」

「うん」

「だから当主は、好きな相手を愛人にできる権利がありますの」

「・・・そうなんだ」

「伴侶は、あくまでも政治目的ですわ」

「確か、門川君のお母さんって・・・」

「えぇ、お父様の愛人でしたわ」