「あれも全部、誰かのために生まれたものだよね?」

「・・・・・」

「そんな優しいものは、やっぱり綺麗だと思う」


綺麗だし、感謝してる。

大切だし、守りたい。

あっちもこっちも、全部、ぜーんぶ守りたい。


「ずいぶん欲張りだな」

「だって全部に価値があるし、好きなんだもの」

「全てをこの手には入れられないし、守れない」


彼は静かにそう言った。


門川君を守るため、命を捨てた永世おばあ様。

お兄さんや奥方を、『守ってくれ』と言えずに逝ったお父さん。

約束を果たさずに、無念に逝ったお兄さん。


人は、望んだもの全てを手に入れられない。

どんなに強く願っても。

どんなにそれが必要であっても。


そんな命と涙を思って、彼はそう言っているんだろう。