「ありがとう天内君」

強くあたしの手を握り、彼が感謝の言葉を伝えてくれた。

あたしは、うっとりしながら答える。

「ううん、あたしこそ・・・」

嬉しいの。とても。



誰もいない夜。

ここには、ふたりきり。


好きな人に、強く手を握られて向かい合う。

そして言われた言葉。

『僕から二度と離れるな』と。


そしてあたしは誓った。

『二度と離れない』と。


あぁ、まるで夢のよう!

切なくて熱い感情が、あたしの心を幸福感で満たしてくれる。

門川君・・・門川君・・・。



「よし。じゃあそういう事で、そろそろ屋敷に戻ろうか」


夢見るあたしに向かって、彼がいつもの淡々とした声で言い出した。


「・・・・・・・はい?」

「戻るんだよ。絹糸としま子が心配しているだろう」


じゃあ行こうか。

そう言って彼は、さっさと屋敷に向かって歩き出した。


ちょ、ちょっと門川君!?

そ・・・

その『もう必要事項は全部伝達済みですから』的な態度は、ナンですか!?