屋敷の庭に入った途端、門川君が立ち止まった。

そして振り返る。

唐突にあたしに話しかけてきた。


「天内君、君に話があるんだ」

「話?」

「君と話したい。二人きりで」


真剣な表情だった。

声も、怖いくらい真面目で固い。


どきっと胸が鳴った。

とっさに返事が出てこない。


「しま子よ、行くぞ」

「うあ・・・」

「心配せずともよい。行くぞ」

「・・・・・うぁ~」


あたしは、抱きかかえていた絹糸をしま子に手渡した。

しま子が屋敷に向かって歩いていく。

何度もこちらを振り返りながら。


そして二人が屋敷の中へ入っていくのを、あたしは見届けた。


「・・・天内君」


どきんっ!


待ち構えていたような彼の声に、また胸が鳴る。

あたしは彼に背中を向けたまま、その声を聞いていた。


「僕は・・・・・」

「・・・・・」

「僕は、君に幸せになって欲しかった」