抜け道を出ると、お岩さんとセバスチャンさんが出口で待っていた。

あたし達全員の無事を、すごく喜んでくれたけれど・・・。

お兄さんの事を聞いて衝撃を受けていた。


「とにかく、皆様がご無事で何よりでございます」

「ええ、そうですわ」


気を取り直すように、二人とも明るくそう言ってくれた。


とにかく休め。

その言葉に甘えてあたし達は部屋へ向かった。

気持ちは浮かないし、急いてもいる。

でも、今すぐ何をどうこうする、といった具体策は何もない。


とりあえず休む事以外、できる事が何もない。


あたし達はそれぞれの部屋へ、無言で引き上げて行った。



あたしは畳の上にぺたんと座り込んだ。

しま子が、少し離れた場所に静かに座っている。


頭の中だけは、忙しくいろんな事が駆け巡っていた。


奥方の事。お兄さんの事。

これから攻めて来るだろう門川の事。

あたしと門川君の事。


頭には浮かぶけれど、解決策は何も無い。

ただグルグルと回転しているだけだ。

時間だけが、無意味に過ぎていく。