「兄上・・・」

「・・・・・・・」

「兄上・・・」

「・・・・・・・」


お兄さんは、いつまでも沈黙を保ったまま。

このままじゃ埒があかない。


いつまでも、ここでノンビリしてられるわけでもないし。


門川君もそう思ったんだろう。


「ご無礼をお許し下さい」


そう言って、障子に手をかけた。


ゆっくりと障子が開けられていく。

ずいぶんと薄暗い部屋の中が、少しずつ見えてくる。


あたしは、破裂しそうな心臓を押さえながら祈った。


お兄さん・・・

どうか、どうかできることなら・・・


門川君を笑顔で迎えて欲しい。


あなたを信じてここまで来た弟を、温かく迎えて欲しい。


この世でたった一人の、あなたの弟を・・・。


どうか・・・!!



障子が、全て開けられた。


ぽつんと、たったひとつのロウソクの明かり。


その明かりが、頼りなげに部屋を照らしている。


そして奥に座っている人物。

かすかな明かりに照らされて、濃い陰影を刻んでいる人物。


そこには・・・


一体の、干からびたミイラが座っていた。