絹糸が後に続いた。

あたしとしま子も、後に続く。


門川君が、障子の手前で止まった。


「兄上・・・永久にございます」


彼の声が、少しだけかすれて聞こえたのは、気のせいじゃないと思う。


あたしの心臓も、皆に聞こえるんじゃないかと思うくらい、激しく鳴っている。


障子越しに揺れて動く影が、ピタリと止まった。


そして、ほんのかすかな声が聞こえる。


「永・・・久・・・?」

「兄上、突然のご無礼お許しください」

「本当に・・・永久、か・・・?」

「はい、兄上。お目通りをお願い申し上げます」

「・・・・・」


お兄さんは、何も言わなくなった。

身動きもせずに沈黙している。


さぞかし驚いているんだろうな。無理も無い。


ずっと何年も会っていなかった弟。

今は、当主の座を争う仲で。

しかも、弟は大罪人で処刑宣告まで下されている。


そんな弟が、ある日突然「会いに来ました」って現れても・・・。

なんて返事をしていいやら、頭真っ白状態だろう。