神様修行はじめます! 其の二

絹糸がキョロキョロと見回し、小首を傾げながら、慎重に進んでいく。

あたしは小声で話しかけた。


「絹糸、大丈夫? 分かる?」

「シッ・・・、声を出すでない」

「ごめん・・・」


ガサガサと鳴る草の音が気になる。

土を踏む足音にさえ気を使う。


いろんな不安を抱えながら、身をかがめて、先を急いだ。



急に草木が途切れて、開けた場所に出た。

質素な庵のような建物が、ポツンと建っている。


草葺の屋根。

竹で編まれた壁。

小さな丸窓に、明かりが寂しげに灯っていた。


「あれじゃっ。あの建物の中に永継がおるぞ」


あの庵にお兄さんが?


・・・風流な建物だけど、なんだか寂しい小屋。


あの豪華絢爛好きな奥方の息子の居場所とは、とても思えない


門川の次期当主になる人が住んでいる場所なのに。


その建物全体から漂う物寂しさ。


お兄さんの心の悲しさを表しているようで、胸が痛んだ。


「・・・間違いないのかっ? 確かかっ?」

「うむ」

「ここに兄上が・・・」


門川君が、胸に迫る声を出して庵を見上げた。


とにかく、ここにお兄さんがいる。

やっと会えるんだ。


お兄さんは、どんな態度で門川君を迎えるだろう。

喜んでくれるだろうか。

それとも・・・。