神様修行はじめます! 其の二

「無理するこたぁねぇ。牛が無理して猿山で暮らさなくても、牛には牛の群れがあるんだ」


当主さんの言葉が、ずしりと重く響いた。


部外者の意味。住む世界が違う意味。

それぞれがそれぞれに相応しい、生きる場所。


分かってる。分かってる。痛いほど。

けど。でも・・・


「ただなぁ・・・」


当主さんが、笑顔であたしの泣き顔を覗き込んだ。


「牛が、それでもここにいたいと言うなら、話は別だべ」

「・・・・・」


あたしは涙いっぱいの両目で、当主さんを見た。


「いたいと言うなら、いればいいさぁ」

「・・・・・」


「牛だって猿だって、誰に遠慮がいるもんか」

「・・・・・」


「どんなに辛くったって、大丈夫さぁ」


当主さんが、梅干おにぎりをひとつ、手に取った。


「これがあるから大丈夫さぁ。なんだって乗り越えられる」


ニカッと白い歯を見せて、あたしに笑いかけた。

あたしは・・・・・


「・・・うあぁぁぁ~~・・・」


大声を上げて、泣いた。