あたしは、部屋を覗き込んだ。


「あ・・・・・」


当主さんが、ひとりであぐらをかいて座っていた。


農作業着姿の背中を丸めて。


何にもない、他に誰もいない部屋に、ひとり。


座り込んでボソボソと独り言をしゃべっている。


大丈夫かな? 当主さん。

ショックのあまり、精神状態が普通じゃないのかもしれない。


その気持ちは・・・よく分かる。


あたしが、一緒についてた方が良いかもしれない。


一歩、部屋の中に踏み出すと、当主さんがこっちを向いた。


「あんれ? 嬢ちゃんでねえか」


意外に、元気な声が聞こえてきた。

当主さんのあぐらをかいた足元に、何かが見える。


あれは・・・写真?


それは永世おばあ様の写真だった。


そして写真の前に、山のようなおにぎりとお味噌汁が置かれていた。