「我が子が一族の者達を治療しておるが、数が多すぎて手が回らぬ!」


「僕も行こう!」


「火災はもう心配要らぬ! 永久頼むぞ!」


「分かった! 案内してくれ!」


絹糸を先頭に、全員が飛び出していった。

バタバタとあわただしい足音が響き渡る。


その足音がどんどん遠くなっていく。


やがて、何も聞こえなくなった。


そして、もぬけのカラになった部屋に・・・


あたしは、ぽつんとひとりで立っていた。


また静寂が訪れたこの部屋に。



皆の後を追うことは、できなかった。

とてもできなかった。


どんな顔をして・・・皆の中にいればいいのか・・・。



焼けた屋敷。

傷ついた一族の人達。

殺されるかも知れない当主さん。


それら全ての原因である刺客達。

殺された刺客達。

ここで、目の前で死んでいった男。


あたしが・・・救おうとした男。


その事実の中で・・・

あたしには・・・


立ち尽くす以外、できる事が何ひとつもなかった・・・。