そんな理屈をひけらかした。


さも、正統な世界の真理を振りかざすかのように。


命は大切。

そんな事実、百も承知のうえで・・・


それでも『生きるための死』を選ばなければ、自分が殺されてしまう人々に向かって。



それが、あたしと自分達の違いだと。


あたしが育ってきた世界と、自分達が生き抜いてきた世界との違いだと。


立派な言葉をいくら並べ立てたところで

綺麗な世界と、素敵な理想しか知らないあたしの


しょせんそれが、限界なんだと。


彼の、あたしを真っ直ぐ見つめる目が・・・


そう物語っていた。



「永久! 無事かっ!!?」


その時、沈黙の空気を破って、猫の姿の絹糸が飛び込んできた。


「岩っ、ここにおったのか! 当主が・・・!」

「お父様がどうかしましたのっ!?」

「虫の息じゃ! 助からぬかもしれぬ!」


ひぃっと息を呑んで、お岩さんの体が硬直した。