神様修行はじめます! 其の二

「あなどれないお方ですね、奥方は」

「そうだ。逆らわん方が身のためだぞ」


男はそう言って、門川君をスッと指差した。


「大罪人 永久をこちらに渡せ」

「絶対に渡しませんわっ!!」


お岩さんが金切り声で絶叫した。


「わが夫を売り渡しはしません!」

「まだ結婚はしていないはずだが?」

「心は永久様の妻ですわ!」


乱れた髪を振り乱しながら、お岩さんはさらに叫んだ。


「わが一族に、このような仕打ちをした者の話など、聞く耳もちません!」


お岩さんは、目に涙を浮かべていた。


田舎な実家を嫌っているとはいえ、権田原一族の当主の娘。


心の底では、一族への愛情と誇りがあるはずだ。


自分の根源である、大切な存在。


それを目の前で無残に踏みにじられてしまったんだ。


どんなにか、その心は傷ついているだろう。


「一族が皆殺しにされても良いのか?」


「なんですって!?」


「素直に渡せば、一族には絶対に手を出すなとの奥方様のご命令だ」


「・・・・・!」


「当主の娘としての責任はどうするのだ?」