「すっかり憑き物が落ちた顔をしとるの」

「ん? そう? そんなヒドかった?」


あたしは手の平で自分の顔をつるりと撫でた。


「地獄の一丁目を覗いとるような顔じゃったわ」


「でしょうね」


「あれだけ泣き喚けば、憑き物も裸足で逃げ出すじゃろうがの」


「いつから聞いてたのよ?」


「最初からじゃよ。みんな揃って隠れて聞いておったわ」


「・・・・・趣味わるー」


「あまりの剣幕に、恐ろしゅうて出て行けんかったんじゃよ」


神獣たる我に恐怖心を抱かせるとはのぉ。

絹糸はそう言って、ほっほっほっと笑った。



「小娘、お前は・・・さすがは天内の末裔じゃよ」



しま子の笑顔。

子猫ちゃんの可愛らしい鳴き声。

絹糸の温かい視線。


あたしは、花束をギュッと抱きしめた。


「みんなで帰ろう。権田原の屋敷に」


門川君のいる場所に。

帰ろう。



あたし達は、星空の下を揃って歩き出した。