「いっその事どうだべ? 婿様」

「なにがでしょうか?」

「今夜、お岩と一緒の部屋に泊まったらどうだべ?」

「お、お父様ったら!」


お岩さんが、顔を赤くして慌てた。


「照れる事ねぇって。お前らは夫婦になるんだぞ」

「もう! お父様ったら飲みすぎですわ!」

「・・・僕は、かまいません」

「は?」


当主さんとお岩さんが、門川君の顔を見た。


「岩さんさえ良ければ、僕はかまいません」

「・・・・・!」


バアァっと真っ赤になったお岩さんが、両手で顔を覆った。


当主さんは、わははと高らかに笑い声を上げた。


「こりゃ孫の顔もすぐ見られるな! おーい酒だ! 酒!」


門川君の肩をバンバン叩き、嬉しそうに笑い続ける。


「婿様の事は、この権田原がきっと守ってみせる! お岩を末永くよろしく頼むだよ!」



あたしは・・・


もうそこで限界を超えてしまった。


立ち上がって座敷を走り去った。

・・・みじめに逃げ出すように。