「そんな事にはさせませんわっ!」


お岩さんが凛と断言した。


「わたくしがお守りいたします!」


「権田原の力を借りるにせよ、ここを出るにせよ、のんびりしておられぬ」


「出る必要なんてありませんわ!」


「華子達の動きを、黙って待っている気か?」


「ベルベットちゃん、聞いてますの!?」


「永久よ、華子と永継を・・・討て」


・・・・・っ!


その場に緊張が走った。

絹糸? 討てって・・・・・。


つまり、殺せって、事?


門川君に、奥方とお兄さんを殺せって?


「生きるための死は、この世界に当たり前に存在しておる」

「・・・・・」

「我が言わずとも、お前ならばそれが骨身に染みておろう」

「絹糸」

「この期に及んでの迷いは、お前自身を滅ぼすぞ」

「絹糸」

「生き延びたければ、決断を・・・」

「僕は、門川を滅ぼしたくないんだ」


門川君は、静かに言い切った。


「おばあ様が必死に守り続けた門川を、僕が滅ぼすわけにはいかない」