「もちろんお父様も存じてますわ」

「そうか、かくまってくれるか」

「当然ですわ。永久様の妻として」


胸を張ってそう答えたお岩さんが、チラリとあたしを見た。


・・・気付いてる、この人。

あたしが門川君の事が好きだって、見抜いたんだ。


「我が一族が、全力でお守りしますわ。ベルベットちゃん」

「我は絹糸じゃ!」


怒鳴る絹糸を無視して、お岩さんは門川君の髪を優しく撫でた。


「大丈夫ですわ。永久様・・・」


彼の婚約者。

その絶対的で優先的な立場を誇るような、その指先。

チクリと胸が痛む。


お岩さんは、彼を守れる。

彼のために、何かをする事ができる。

あたしは・・・


あたしには何もない。

彼を守る事も、何かをする事も。

それどころか

側にいること自体を、拒絶されてしまった。