ほんのりと空が明るくなってきた。


濃紺の空が、優しい藍色に生まれ変わっていく。


空を舞う淡い光も、いつの間にか消え去っていた。



そうだ。

逃げるあたし達の上にも朝日は差す。

だからきっと大丈夫。

彼は大丈夫。


彼が無事でいてくれるなら

それだけで、あたしはもう・・・


すすり上げて泣きながら、あたしは急いだ。

まっすぐ、懸命に前を向きながら。


彼の婚約者の元へ彼を届けるために。

それが彼のためになる事だから。


一刻も早く、早く。



いつまでもいつまでも枯れない涙。

お願い、早く止まって。

もう朝日が昇る。

見られてしまう。見られたくないの。

彼の婚約者にも、誰にも・・・。



昇る朝日に照らされながら、あたし達は急ぎ足で逃げ続けた・・・。