綺麗な水色だった水の色は
 濁り、淀んだ緑色になっていた。


 しかも辺りは昼過ぎだというのに
 薄暗く、靄が出ている。




 しばらくしてカタン、と
 音がしてゴンドラは

 何かに引っ掛かった。



 「引っ掛かっちゃった?」



 狼耳をひょっこり出したツキが
 水を覗き込む。


 しかし、水は濁りすぎて
 何も見えそうにない。



 「たぶんな…」

 同じく狼耳を出したウルーも
 困ったように言った。



 「もうすぐ陸地ですよ?
  飛べばいいじゃないですか」



 貴族っぽい服と一緒に
 長い尻尾を揺らし、アルは

 ちょっぴり威張って言う。



 …威張ってるけど
  ちまっとしてて、可愛い。



 そんなことを考えながら
 ツキは言った。




 「あと100mはあるよ?
  飛べるわけないよ…」


 こんな足場の悪いゴンドラの
 上じゃなくても
 100mなんて絶対無理だろう。


 しかしツキの言葉に
 ウルーとアルはきょとんとした。





 「いや、大丈夫だろう」
 
 「え?」

 「余裕です」

 「ええっ?」



 さらっとそう言うと、
 ふわり、と光が辺りを包んだ。



 「…そういうことなのね…」



 光が止んだ時居たのは

 銀色の狼と、真っ白い猫。


 ウルーはいつも
 大きな狼になるわけでもなく

 普通サイズの狼だった。




 アルも相変わらず、
 猫らしからぬ雰囲気だ。





 「ねぇ、私はどうしたら…」


 ツキが言い終わる前に
 アルが体をくねらせ、
 飛び上がった。




 「ー!!?」



 小柄な白色の猫は
 くるりくるりと回りながら

 たしりと向こうに着地した。




 (猫が100mも飛ぶなんて…)



 異様な光景かもしれない。