12年目の恋物語


「ってことで、ここは叶太くんのおごり、ね」



と、志穂がニッコリ笑って、テーブルに置かれたメニューを改めて斎藤に渡した。



「好きなもの、頼みなよ」



斎藤は天ぷらうどん。

やっぱり、帰ってから二食目が待ってると言うと、そういう選択になるよな?



食べながら、軽く話し、食べ終わってから、飲み物を取って、改めて話す。

だけど、新しく分かったことと言えば、ハルが「自分が悪い」と言っていたらしいことくらい。

それでも、十分な新事実。



……けど、オレ、なんか忘れてる気が、



あ!!



しまった!!



「言い忘れてたこと、あった!」

「なになに?」



早く言いなさいよ、と志穂。

斎藤もオレの言葉を待つ。



言いにくい。

言いにくすぎる。



絶対に、何を今更って、言われる。



兄貴と話をして、ちゃんと「好きだ」って、伝えたことがなかったって、気が付いた。

だから、ハルに告白しようと思ったんだ。

けど、普通の会話すらしてもらえない毎日。

告白できそうな、そんな甘い雰囲気になるどころか、オレとハルの間には、毎日、重い空気が漂っている。



だから、



結局、まだ、



好きだって、言えてなくて……。



「おい、広瀬。早く言えよ」



斎藤の言葉に、オレは覚悟を決めた。



言いにくいけど。



ムチャクチャ、言いにくいけど……!!



「オレさ、ハルと付き合ってなかったらしい」



次の瞬間。



「はあ!?」



見事、斎藤と志穂の声が重なった。