「ってことで、ここは叶太くんのおごり、ね」
と、志穂がニッコリ笑って、テーブルに置かれたメニューを改めて斎藤に渡した。
「好きなもの、頼みなよ」
斎藤は天ぷらうどん。
やっぱり、帰ってから二食目が待ってると言うと、そういう選択になるよな?
食べながら、軽く話し、食べ終わってから、飲み物を取って、改めて話す。
だけど、新しく分かったことと言えば、ハルが「自分が悪い」と言っていたらしいことくらい。
それでも、十分な新事実。
……けど、オレ、なんか忘れてる気が、
あ!!
しまった!!
「言い忘れてたこと、あった!」
「なになに?」
早く言いなさいよ、と志穂。
斎藤もオレの言葉を待つ。
言いにくい。
言いにくすぎる。
絶対に、何を今更って、言われる。
兄貴と話をして、ちゃんと「好きだ」って、伝えたことがなかったって、気が付いた。
だから、ハルに告白しようと思ったんだ。
けど、普通の会話すらしてもらえない毎日。
告白できそうな、そんな甘い雰囲気になるどころか、オレとハルの間には、毎日、重い空気が漂っている。
だから、
結局、まだ、
好きだって、言えてなくて……。
「おい、広瀬。早く言えよ」
斎藤の言葉に、オレは覚悟を決めた。
言いにくいけど。
ムチャクチャ、言いにくいけど……!!
「オレさ、ハルと付き合ってなかったらしい」
次の瞬間。
「はあ!?」
見事、斎藤と志穂の声が重なった。



