いい知恵も浮かばないし、まずは腹ごしらえ、と黙々と食べ始めて数分経った頃。
左手にご飯の入った茶碗。右手にお箸というスタイルで、手を止め、志穂が言った。
「ねえ、斎藤くん、呼ばない?」
……は? 斎藤?
思いもかけない名前の出現に、オレの手も止まる。
「なんで?」
志穂が言葉を探すように、一瞬、視線をさまよわせた。
「だって、なんか、わたしたちだけで話してても、解決する気がしないんだもん」
「や、でも」
「なに? 叶太くん、斎藤くんを呼ぶの、イヤなの?」
「イヤって言うか、」
斎藤には、既に、あれもこれも話していて、だけど、ろくに相手してもらえてないから。
と、思わず、頭をかくと、志穂がまたビシッと人差し指を立てた。
「三人寄れば、文殊の知恵」
三人でなら、色々知恵も浮かぶ。
……まあ、確かに。
「でも、なんで斎藤?」
「陽菜の隣の席だし、叶太くんとも仲良さそうだから」
「そんだけ?」
「えっとね。斎藤くんも、陽菜と叶太くんのこと、心配してるみたいだったから」
「あ、そうなんだ」
そう言うと、志穂がオレをマジマジと見た。
「叶太くん、真剣味が足りない」
「え? そんなこと」
「もっと、捨て身になった方がいいよ」
「……なんで?」
「陽菜、可愛いじゃん。すっごくいい子だし」
「ああ」
それは、もう、文句なしに。
ハルのことを考えると、思わず、顔がにやける。
それを見て、志穂が呆れたように言った。
「もし、叶太くんとうまくいってないなんてバレたら、
名乗りを上げる男子、たぶん、いくらでもいるよ」



