「ごめんね、待たせて」
制服に着替えた志穂が、小走りにやってくる。
「いや。オレこそ、ごめん。疲れてんのに」
「ぜんぜん平気」
志穂はカラカラっと笑って、腰に手を当てると、辺りを見回した。
「んー。どこで話そうか?」
外は暗い。
もうすぐ、学校も閉まる時間。
「志穂って、電車だっけ?」
「うん」
「じゃ、駅前のファミレス行こう。おごるわ」
「え? いいの? ヤッタ」
志穂はガッツポーズをした。
「自転車取ってきていい?」
「もっちろん」
志穂は元気だ。
そして、明るくてさわやか。
オレは男女ともに友だちは多いし、女子とも平気で話す方だ。
でも、その中でも志穂は別格で、とにかく話しやすい。
サバサバしてて気持ちがいい。
その後腐れなさが、男っぽいと言ったら、ぜったい、文句言われると思うけど。
「あ、少し遅くなるって、家に電話しよう」
「じゃ、夕飯食べてくって言っとけば?」
「え? なに? お茶じゃなくて、ご飯食べていいの!?」
「何でも食べて。これから話して、帰ってから夕飯じゃ、腹減るだろ?」
「ありがとう! じゃ、電話してるから、自転車取っておいでよ」
「わかった!」
オレが駆け出すと、後ろから、
「慌てなくていいよ~!」
という声が聞こえてきた。