12年目の恋物語



放課後の体育館。



「こら! 真衣! よそ見しない!」



先輩の怒声が響き渡る。

田尻真衣が慌てて、



「すみません!」



と頭を下げた。



練習の合間に、同じくバスケ部の真衣が、何かを気にするように、チラチラ見ていたのには、気づいていた。

それが、いったい何なのか、気になって見ると、そこには彼方くんがいた。

わたしに気が付くと、笑ってヒラヒラ手を振ってくる。



……あれか。



目立たないよう、視線だけ合わせて、笑顔を見せた。



真衣は、叶太くんが好きだ。

陽菜がいるから、できるだけ顔に出さないように、態度に出さないようにと、努力しているらしい。

だけど、長く一緒にいれば、見えてしまうモノもある。

直接、本人から聞いたことはないけど、分かってしまった。



でも、もちろん、叶太くんは、真衣の気持ちになど、気づきもしない。



陽菜に夢中で、他の女の子の方なんて、見ようと思ったこともないと思う。