12年目の恋物語


思わず、言ってから、


しまった!!!


と後悔した。



陽菜の表情が、一気に曇ったから。



曇ったと言うか、今にも泣き出しそうで……。



こんなところで、言うんじゃなかった!!!

せめて、2人きりのときにするんだった。



だけど、梨乃も亜矢も悪い子じゃない。

一度、口にしてしまったことは、なかったことにはできない。



だから、



「あー。えーっと。わたしで良かったら、いつでも、話聞くし」



と、言うしかなかった。



ちょうど、隣に座っていたから、陽菜の肩をそっと抱き寄せて、



「話すだけでも、楽になること、あるよ?」



と、陽菜の耳元でささやいた。



それを見て、



「ひゅーひゅー。志穂ちゃんってば、男前~!」



梨乃が明るくからかう。

一瞬さした影を払うように。



「わたしも、いつでも聞くよん」



亜矢もほおづえを付いて、にっこりと陽菜に笑いかけた。

陽菜は、驚いたように、



「ありがとう」



と言った。



今は、これでいい。

また、改めて話をしよう。



今度は、2人きりのときに。